更新日:2008年9月16日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光の観光振興方策の提言
平成20年9月
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫英光
1 観光キャンペーンのあり方について
1 「ポスト篤姫」は篤姫から始まる歴史物語
大河ドラマ「篤姫」は,西郷,大久保に続く郷土のニューヒロインを生み出し,篤姫を育んだ薩摩の歴史・文化を,日本中に強く印象づけた。この篤姫パワーを今後に生かし,放映終了後も,篤姫目的の観光客のニーズに応えられるよう,恒久的な篤姫関連の展示内容や施設のあり方等について,検討すべきと考える。
また来年は,篤姫の養父・島津斉彬生誕200周年。斉彬の集成館事業をはじめとする九州・山口の近代化産業遺産は,世界遺産登録を目指して文化庁に共同提案され,国内暫定リスト入りの発表が待たれている。
さらに,来年は肥薩線全線開通100周年。肥薩線は経済産業省が選定した全国の近代化産業遺産群の一つで,嘉例川駅などレトロ感溢れる駅も含まれている。
篤姫から斉彬と近代化産業遺産,肥薩線といった素材をつなげて,幕末以降の歴史物語を描き,「ポスト篤姫」キャンペーンの柱とすべきである。
2 皆既日食を世界に情報発信
もう一つのビッグイベントは来年7月22日,継続時間が今世紀最大の皆既日食。
観光サイドで取り組むべきは,この皆既日食を契機とした情報発信。種子島や奄美大島等ではプレイベントが実施されるなど,地域主体の盛り上がりが見られる。こうした動きは,今後の観光地づくり,地域づくりにつながるものであり,県全体として外国語のホームページの整備も含め,情報発信についてバックアップすべきである。
3 旅のイメージ戦略
「本物。鹿児島県」は,今後の観光PRの基本コンセプトとして,広く活用すべき。
その上でもう一つ,鹿児島の旅の魅力を表現するとすれば,「時間がゆっくりと過ぎていく旅」。旅に癒しや人間性の回復を求める傾向が強まる中,大自然に包まれたのんびりした旅の魅力を,九州新幹線のスピード感とのコントラストで際立たせると,インパクトのあるイメージ発信になる。
4 キャリア・旅行エージェントとの連携強化
鹿児島は大消費地から遠いため,キャリアや旅行エージェントの企画商品への依存度が高く,いかに連携を図るかがキーポイント。
九州新幹線全線開業前の段階から,特にJR九州,JR西日本と緊密に連携し,北部九州地区はもちろん,中国・関西地区に対して重点的にキャンペーンを展開すべき。
また,全線開業の影響で航空路線が細ることがないよう,航空会社との連携を強め,鹿児島空港乗り継ぎの離島への旅行商品造成等に力を入れる必要がある。
5 「よかとこ100選」を全国に発信
足元に隠れた観光素材を県民に発掘・再発見してもらうことを目的とした「よかとこ100選」シリーズが,今年度の「食彩の旅」で完結する。このシリーズへの評価は高く,今年8月にはコラボレーションによるDVDも発売されている。
この高い情報発信力を生かして,今後,データベース化やベスト版化を図り,セールス等で活用するとともに,全国販売を行うなど,積極的に県外に打って出るべき。
6 海外からの観光客誘致戦略
鹿児島の知名度を上げるためには,ウェブサイトによる情報提供機能の強化・充実が最優先。東京~大阪のゴールデンルートとの連携を図る上では,「さんふらわあ」の活用が鍵。直行便を活用した誘客については,特に,富裕層向けに滞在型の上質な旅を提供することが,長い目で見ると有効である。
今後増加が見込まれる個人客対策としては,農林漁業体験や観光農園体験等を,海外旅行エージェント・マスコミ招待事業等の中に織り込んでいくことが重要である。
7 新幹線全線開業は修学旅行誘致のチャンス
修学旅行は,地区の学校が連合体で同一時期に同じ地域に行く傾向。またマンネリ打破のため,3年又は6年毎に行き先を変えるなど,新しい話題に学校は敏感。九州新幹線の全線開業は,行き先の変更を働きかける絶好のチャンスとなる。
特に,関西以西の教育関係者に鹿児島への修学旅行の魅力をPRするとともに,併せてJR西日本,JR九州に専用車両の運行と修学旅行運賃の適用を要請し,学校側が行き先変更を容易にできるような環境整備に努めることが重要である。
2 観光地づくりのあり方について
1 地域の担い手育成が最重要
持続的に観光客の誘致を図るためには,地域の素材発掘,商品化,PR,販売に至る実践課程を身に付け,地域づくりを担うリーダーの育成が最重要課題。
本年11月に九州域内の現場で活躍している地域づくりのリーダーを講師に招き,実践的課題の整理と解決法を学ぶ人材育成塾を開催する予定である。
2 錦江湾の魅力再発見!
錦江湾の向こうに桜島や開聞岳が見える景色は,観光客には非日常的で魅力ある景色。マリンポートは,世界屈指の景観で訪れた観光客の心に強い印象を刻み込む。
錦江湾でのフィッシングやシーカヤックなどのマリンスポーツは,訴求力十分。また,桜島フェリー等船旅の魅力やクルージングの楽しさをアピールすることも重要。ランチやディナーを楽しみながらのクルージングは,滞在型観光の目玉になり得る。
さらには,錦江湾岸の道路景観や遊歩道を一体的に整備すると,薩摩半島,大隅半島双方から,変化に富んだ素晴らしい景観が堪能できる。
この価値ある錦江湾を観光地づくりの中心に据えて,その活用に取り組むべきである。
3 まち歩きの磨き方
今やまち歩きが新しい旅のトレンドであるが,今和泉の篤姫観光ボランティアガイドの大活躍に見られるように,「実践が人を育て,まち歩きを磨く」。まち歩きのコースをつくり,研修を積んでも,実際に観光客を案内しなければ進歩は望めない。
一方,まち歩きは個々バラバラでは情報発信力に欠けることから,長崎市は「さるく博」,別府は「八湯オンパク」で「ブランド化・パッケージ化」を図っている。
ウェブサイトの立ち上げ等により,情報発信力を高めるとともに,具体の旅行商品として展開し,実践的にまち歩きを磨いていく必要がある。
4 鹿児島をグリーンツーリズムのメッカに
自然豊かで人情に厚い鹿児島は,グリーンツーリズムの聖地になりうる可能性十分。農林漁業体験は今や修学旅行の定番メニューとなっている一方,学校及び取扱旅行社においては,営利を目的としない農林漁業体験民泊についても,万一の事故等に備えて,官民共同で安全・安心な地元受入態勢を構築してほしいという声が強い。
今後,農林漁家における安全性と質の確保を図るなど,受入態勢を整える一方,旅行商品として流通させるために,観光によりシフトした形で推進する必要がある。
5 「食の宝庫」鹿児島を前面に
「まぐろラーメン」「鹿籠豚丼」など地域限定B級グルメを全国展開するには,県内を食べ歩くツアーの造成など,マスコミともタイアップした仕掛けが必要。
また,全国に誇る茶の産地として,生産者側と連携して旅館やホテルでは上質の鹿児島茶を提供し,品質の良さを実感してもらうことが,販売戦略上も有効である。
6 地域別観光地づくりの方向性
(1)鹿児島・桜島地区
鹿児島の玄関口として,オールラウンドな旅の魅力を向上させるべき。公共空間を整備し,コンベンション機能の充実,歴史・文化遺産豊かな,知的興奮を伴う街づくりを進めるとともに,桜島の魅力を前面に,間近に見る活火山の迫力と市街地の景観の素晴らしさなどをPRする必要がある。
(2)指宿地区
日本最大級の花のテーマパーク「フラワーパーク」を有し,気候温暖であることから,街中を花と緑で埋め尽くすくらい徹底して,「一年中花咲き誇るガーデンシティ」を目指し,官民一体でそぞろ歩きを楽しめる街づくりに取り組むべき。
(3)霧島地区
「霧島アートの森」や「みやまコンセール」など,芸術・音楽の郷としてのイメージ追求が必要。「霧島神楽と太鼓の夕べ」や,来年30周年を迎える「霧島国際音楽祭」は,今後,特に力を入れていくべきイベントである。
(4)北薩地区
甑島の「ブルーツーリズム」は,体験メニューが充実しており,販売ルートをどのように確保するかが課題。さつま町の「グリーンツーリズム」は,本格的な取組となってきた。地域の食材や景観などの情報発信と集客が課題である。
出水は,今まで鶴に頼ってきた感があるが,風格のある武家屋敷群は,知覧に勝るとも劣らない観光資源として,もっと光を当てる価値がある。
(5)南薩地区
坊津から野間池に至る街道は,県本土で最後に残された未開拓の道。特に,南さつま街道八景は魅力があり,沿線の歴史,雄大な海岸線の美しさをPRし,個人型旅行の商品として売り出すべき。
体験型観光のトップランナーとして,県全体をリードしてほしい。
(6)大隅地区
新幹線全線開業後も,アクセス面から観光客誘致は苦戦が予想され,鹿児島中央駅から鹿屋市までの直通バスの運行や,関西からの「さんふらわあ」利用促進が鍵。観光ルート形成上,宮崎県南部地域との連携強化が重要となり,佐多岬の整備が課題。食の宝庫であり,質の高いグリーンツーリズムの定着に取組むべき。
(7)種子・屋久地区
屋久島は観光客が増えている一方,環境問題も懸念され始めており,自然を守り抜くという姿勢を貫くことが,価値を高め,長期的な観光振興につながる。
駐車場からのシャトルバスサービスによる車の乗入れ規制が行われているが,この取組は,屋久島の自然に対する地元の姿勢を明確に示すものとして,強くアピールできる。さらに,通年規制を目指すべき。
種子島は,美しい海を活かしたマリンスポーツやイベント,安納芋など独自の素材を活用したグリーンツーリズムを推進すべきである。
(8)奄美地区
独特の奄美文化と手つかずの自然が残り,今後大いに期待が持てるエリア。金作原原生林,田中一村記念館,マングローブ原生林,加計呂麻島と都会では体験できないポイントが多くあり,癒しの島として大きな発展可能性を秘めている。
映画「男はつらいよ」の最終作の舞台として,また,この秋のNHK土曜ドラマ「ジャッジII」のロケ地としてもPRしていきたい。
7 その他
(1)オフ期対策として有力なのは,冬の灯りのイベント。九州地区で取り組み大きな効果を上げているが,鹿児島には何もイベントがない。竹林面積日本一の本県において,竹林整備を兼ねて一石二鳥で作った竹灯籠でイベントを仕掛け,キャリアやエージェントとタイアップしてPRすれば,高い集客効果が見込める。
(2)スポーツ合宿で鍵を握るのは地元の受入態勢。宮崎県の市町村は合宿施設割引料金を設定しているのに,本県では,住民以外の利用について割増料金を課している自治体が見られる。スポーツ合宿は通常平日に行われ,土日中心の地域イベントとは棲み分けが可能であることから,スポーツ合宿誘致を地域振興につなげるという共通認識に立って,地域ぐるみで積極的に取り組むべきである。
(3)よく言われているように,今消費をリードし,観光を牽引しているのは女性。女性ならではの感性を地域づくりや観光政策に活かしていくことが求められ,地域づくり団体や観光関連の推進会議には,女性を積極的に登用すべき。
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