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更新日:2011年12月26日

4月のちょっといい話~個別の課題から(子ども)~

 2歳になったばかりの息子が,食事の時,食べたものをずっと口の中に入れたまま飲み込もうとしませんでした。私は,次々に待っている家事のことを考えて,
 「早く食べなさい。もぐもぐごっくんしなさい。」
と急かしていました。
 「どんぐりの家」(小学館,山本おさむ著)第2巻を読むまでは,息子の行為は無邪気な「いたずら」(遊び)とばかり思っていました。
 そこには,ミカンやブロッコリーを口から吐き出しては,手のひらに載せて相手に差し出し,「だー,だー」と遊ぶみどりちゃんのことが描かれています。
 みどりちゃんは,聴覚にかなり重篤な障害があり,偏食の激しい子でした。母親は何とか食べられるようにと,いろいろな工夫を凝らして,みどりちゃんにかかりっきりで家事と育児に精を出していました。そんな身を粉にして頑張る母親に対して,父親は,ただ心の中で手を合わせるだけでした。
 ある時,ニコニコ顔で吐き出したものを差し出すみどりちゃんに,父親はとうとう,
「食べ物で遊んじゃいかん,お母さんの気持ちが分からんのか。」
と,みどりちゃんを叩いてしまいます。母親の苦労が少しでも報われるようにと,思いあまってのことだったようです。みどりちゃんは,泣きながら家を飛び出してしまいました。
 後で分かったことですが,実は,みどりちゃんは遊んではいなかったのです。
「このミカン,とってもおいしいよ。食べてみて。」
と,言葉には表せないながらも,おいしいものを他の人に分けようとしていたのでした。自分で食べてみて,とてもおいしかったので,誰かにもあげようとしていたみどりちゃん。自分の言葉で訴えようとしても,訴えられない,分かってもらえないみどりちゃんの気持ちを考えると,心臓をぎゅっと握られて,息が詰まり身動きが取れない感覚になりました。
 気を取り直して,息子の行動に思いを馳せました。もしかしたら,何かしらの思いがあってのことなのか,どうなのかと。
 教師である私は,いつの間にか,子どもに対して「教えてやろう。きちんとしつけよう。」という意識が自動的に働いていたみたいです。子どもの思いや行動のその裏に隠れているものを見つけようとしないまま,教師然としていた自分が恥ずかしくなりました。
 その日以来,我が家では,「早く食べなさい。もぐもぐごっくんしなさい。」は言わなくなりました。

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