更新日:2020年3月31日

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研究報告(令和元年度)

サトイモにおける優良種いも生産のための湛水畝立て栽培に関する研究

池澤和広・別府誠二・緒方寿明・加治屋五月・湯田達也・福元伸一・遠城道雄

要約

トイモ栽培で最も重要な優良種いも生産を目的に,新たに開発された湛水畝立て栽培法による増収技術の確立に取り組んだ.その結果,葉数が5枚以上展開した6月から3か月程度畝間に水を流しながら湛水することにより,‘石川早生丸’における規格内(20~80g)種いもの個数と重量が5割程度増加し,乾腐病や芽つぶれ症等の障害いもの発生も軽減できた.本栽培法で生産されたサトイモは種いもとしての高い生産能力が認められ,優良種いも生産には湛水畝立て栽培法が有効であることを明らかにした.また,被覆尿素リニア型70日タイプにおける窒素の溶出はサトイモの生育パターンと合致し,適性が高いことが認められた.本栽培法における病害虫の発生消長を明らかにし,それに基づいた病害虫防除技術を確立した.

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鹿児島県内サトウキビ畑の土壌酸性化の実態と陽イオン交換容量に基づいた酸度矯正対策

餅田利之・井上健一・橋口健一郎・脇門英美

要約

鹿児島県産サトウキビの単収維持・向上を支える土づくりを推進する観点から,サトウキビ畑土壌酸性化の実態を解析すると同時に,酸度矯正に要する石灰質肥料の施用量を簡易に把握する方法を検討した.その結果,種子島の黒ボク土畑では約7割,徳之島の赤黄色土畑では8割を超える圃場で土壌pH(H2O)が土壌診断基準値を下回り,交換性カルシウム含量も少なかった.このことから,これらの地域では酸度矯正の必要な圃場が多いことが明らかとなった.そこで,圃場の中和石灰量を簡易に把握し効率的かつ効果的な酸度矯正を産地で実践してもらうため,土壌pHと陽イオン交換容量から推定する中和石灰量の早見表を黒ボク土と赤黄色土で作成した。また,赤黄色土の早見表については,徳之島以外の奄美地域でも適応可能であることを確認した。なお,陽イオン交換容量の把握は,過去の土層改良事業等のデータを参考にすることが可能であり,ここでは地域別の具体例を提示した.

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チャノホソガの効率的な防除に関する研究

上室剛

要約

チャノホソガCaloptiliatheivora(Walsingham)は,老齢幼虫がチャの新葉に三角巻葉を形成する.製造した茶に三角巻葉が多量に混入すると内部に堆積された虫糞の影響で茶の浸出液が赤みを帯び,製品の品質を落とすため,チャにおいて本種は重要害虫である.本研究は本種の効率的な防除に貢献するための知見を得ることを目的に研究を行い下記の結果を得た.

1.チャノホソガの発育と交尾・産卵行動
チャノホソガを24℃で室内飼育し,各発育ステージの所要日数を調べた結果,卵から羽化までの総発育日数は26.6~28.1日であった.また,雄は雌より1.5日早く羽化した.次に,本種の発育および交尾・産卵行動を調査した.羽化当日,雄はほとんど交尾しなかったが,雌は交尾可能であった.このことから,雄は雌より先に羽化することで,雌の羽化と同時に交尾できる体制を整えるという繁殖戦略をとっている可能性が示唆された.次に,成虫の交尾頻度が寿命や産卵数に及ぼす影響を調査したところ,未交尾の雌雄は既交尾の雌雄より寿命が有意に長かった.ただし,雌雄とも16日齢以降は交尾能力が低下した.また,雌雄共に複数回の交尾が可能であり,雌は複数回の交尾で産卵数が増加した.さらに,8月の自然採光の条件下で雌は20~24時の間に産卵することが明らかになった.

2.チャノホソガの異なる発育ステージにおける各種殺虫剤の効果
チャノホソガの各発育ステージ(卵期,潜葉前期,潜葉後期,葉縁巻葉期)における各種殺虫剤の効果を室内試験において検討した.その結果,殺虫剤により効果を発揮する発育ステージが異なりその効果にも差異があることが明らかになった.すなわち,IGR系の殺虫剤は卵期処理において殺卵およびふ化後幼虫に対する殺虫効果があり,潜葉前期処理においても殺虫効果が認められた.ネオニコチノイド系の殺虫剤は殺卵効果が高く,ピレスロイド・ピレトリン,アベルメクチン,スピノシン,ネライストキシンおよびジアミドの各系統の殺虫剤は試験をした全ての発育ステージで効果が高かった.BT剤と一部のIGR剤の殺虫剤は,葉縁巻葉期に処理すると,三角巻葉は形成されるものの,三角巻葉内で幼虫を死亡させ,緑茶品質を悪化させる原因となる虫糞の堆積を抑制した.一方,供試した有機リンとMETIの両系統の殺虫剤は全ての発育ステージで効果が低かった.

3.チャノホソガのIGR剤に対する薬剤抵抗性
鹿児島県内各地の茶園においてチャノホソガに対するベンゾイル尿素系IGR剤の防除効果を検討した.その結果,南薩地域では防除効果が低いことが明らかになった.次に,県内各地の地域個体群について感受性検定を行った結果,南薩地域個体群ではフルフェノクスロンに対するLC50値が21.5~57.0ppm(抵抗性比239~356倍)を示し,感受性低下が確認された.その原因は他の害虫を含めた防除に本剤を約10年以上連用したことにあると推測された.なお,南薩地域以外の個体群ではベンゾイル尿素系IGR剤の効果は高かった.一方,ジアシルヒドラジン系IGR剤のメトキシフェノジド,および非IGR剤であるネオニコチノイド系のジノテフランとジアミド系のクロラントラニリプロールは県内のいずれの地域でも効果が認められた.

4.茶園におけるチャノホソガに対するBT剤等の効果
茶園におけるチャノホソガに対して,BT剤の従来の剤型であるエスマルク®DFの散布適期は,チャの新芽の生育ステージでは3葉期であることが明らかになった.また,フロアブルタイプのBT剤であるサブリナ®フロアブルは,チャの新芽の生育ステージでは0.5葉期または3葉期のいずれの葉期の散布でも効果を示し,散布適期幅が広いことが示唆された.らに,各品目の最適栽培法を組み合わせた輪作体系は,各品目の可販収量の増加により各体系とも所得目標を達成し,木柱平張施設において高収益輪作体系が可能であることが明らかになった.

5.チャノホソガ成虫に対する各種殺虫剤の効果
チャノホソガ成虫に対して,殺虫剤の局所施用による直接処理の影響を調べた.さらに,茶葉等に付着した殺虫剤成分が間接的に本種成虫の生存や産卵数及びその次世代の卵の孵化率や孵化幼虫の生存などに及ぼす影響をドライフィルム法と葉片浸漬法を組み合わせた方法により調査した.局所施用法によりクロラントラニリプロール,シアントラニリプロール,スピネトラムのLD50値は非常に低い値を示し,これらの殺虫剤は本種成虫に対して接触毒が強いことが明らかになった.後者の2剤は,成虫の生存に影響しない低濃度でも産卵数を抑制することが分かった.クロラントラニリプロール,シアントラニリプロール,フルベンジアミド,スピネトラム,スピノサド,アバメクチン,エマメクチン安息香酸塩,サブリナ®フロアブルおよび脂肪酸グリセリドは,茶葉および飼育容器に付着した殺虫剤成分が未交尾雌雄成虫に対して殺虫効果と交尾阻害効果を示し,雌成虫には産卵抑制効果も示した.これらの殺虫剤は既交尾の雌成虫に対しても殺虫効果と産卵抑制効果が認められた.以上の結果から,チャノホソガの防除に利用されている殺虫剤の一部は,成虫の生存や産卵数,および次世代の卵の孵化率低下などに影響し,個体群の抑制に貢献している可能性が示唆された.

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黒毛和種肥育経営の経済性向上を目指した出荷月齢早期化技術の開発

坂下邦仁・森脇潤・磯部知弘・靍田洋一・川畑健次

要約

本研究では,効率的な牛肉生産を目的に肥育開始を9ヵ月齢,出荷を24ヵ月齢とする短期肥育体系で飼養した黒毛和種去勢肥育牛について,その枝肉成績および筋間脂肪のオレイン酸および一価不飽和脂肪酸(MUFA)含量を調査した.その結果,生後9~13ヵ月齢の肥育前期にCP14.8%,TDN62.5%,生後14ヵ月齢以降の肥育中・後期にCP13.4%,TDN70.8%の混合飼料を飽食給与することで,通常出荷牛と遜色のない肉量および肉質を確保できることが示唆された.一方,和牛肉の「美味しさ」や「風味」の指標である脂肪のオレイン酸およびMUFA含量については,2~4ポイント低い傾向(P<0.10)を示した.また,現状の約20ヵ月間の肥育期間を5ヵ月短縮した結果,肥育牛1頭あたりの固定費が約4.1万円圧縮されることから,収益性の改善が図られることが示された.さらに,短期肥育体系に適した肥育素牛の体型を明らかにするため,肥育開始時(9.3ヵ月齢)の体型測定値(体重,体高,十字部高,体長,胸囲および腹囲)と,それぞれの測定値を他の測定値で除した体型係数について,各枝肉形質との相関関係を検討した.その結果,短期肥育体系に適した肥育素牛の体型測定値は,8ヵ月齢が体重293.6kg,体高115.6cm,胸囲135.1cmおよび腹囲161.2cm,9ヵ月齢時が体重325.6kg,体高119.0cm,胸囲149.8cmおよび腹囲178.8cm,と推定された.なお,8ヵ月齢時の体型の推定値は,「子牛育成飼料給与マニュアル(鹿児島県肉用牛振興協議会,2015年)」の出荷目安である8.2ヵ月齢の体型値(体高115cm,体重280kg)を十分に満たしており,肥育開始や出荷月齢の更なる早期化が可能であると考えられることから,今後,検討を進めていく必要がある.

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乳牛の空胎期間短縮に向けた研究

東山崎達生・田中靖広・上山繁成・脇大作

要約

用牛の空胎期間の短縮を目的に,ホルスタイン種雌牛延べ52頭の分娩前後におけるボディコンディションスコア(BCS),体重減少率,遊離脂肪酸(NEFA)濃度,酸化ストレス(TBARS濃度)及び生化学検査を実施し,分娩後初回授精日数及び空胎日数との関連性を調査した.初回授精日数の目標値(88日)をオーバーした牛は,分娩後60日までのボディコンディションスコアと体重の減少が大きく,NEFA濃度,TBARS濃度,血中尿素窒素(BUN)とγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)濃度が高く,無機リン(iP)濃度は低い値で推移した.空胎日数の目標値(145日)をオーバーした牛は,分娩前のボディコンディションスコアが低く,分娩後7日目の体重が大きく減少し,NEFA濃度,TBARS濃度,グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)濃度が高く,血清カルシウム(Ca)濃度は低い値で推移した.また,場内と県内酪農家1戸のホルスタイン種雌牛17頭を用いて,メトリチェック及びサイトブラシによる子宮検査を行ったところ,潜在性子宮内膜炎と診断された牛はいなかった.以上のことから,分娩後のボディコンディションスコアと体重の減少は初回授精日数に影響を及ぼし,分娩後の酸化ストレスを抑制することで,空胎期間の短縮につながることが示唆された.

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「第4系統豚」の利用・普及のための組合せ試験

前田昂亮・諏訪寛太・野崎聡・大小田勉・鈴々木昭一

要約

成27年度(2015年度)に完成した「かごしま黒豚」の第4系統豚「クロサツマ2015」(B4)の最適な利用方法を検討するために,維持後18~27年経過した第3系統豚「サツマ2001」(B3)および第2系統豚「ニューサツマ」(B2)との組合せ試験を行った.各系統豚の繁殖候補豚としての発育能力調査を行ったところ,育成期間の1日増体量(DG)は雌雄ともB3が,B2,B4と比較して高い傾向にあった.体重105kg時点のロース断面積(EM)は,雌ではB4がB3と比較して大きくなる傾向に有り,雄ではB4がB2と比較して有意に大きくなった(P<0.05).体尺測定値では,B3の雌の体長がB4の雌と比較して,有意に長くなった(P<0.05).各系統豚の肥育豚としての能力を調べるために,産肉能力調査を実施したところ,DGはB3,B4がB2と比較して有意に高かった(P<0.05).体重115kg時点のEMは,B4がB2,B3と比較して有意に大きかった(P<0.05).背脂肪厚(BF)は,B4がB2と比較して薄くなる傾向にあった.各系統豚の繁殖能力を調査するために,総産子数,離乳頭数および離乳時総体重を調べたところ,系統間で有意な差は無かった.2系統間交雑豚B4B2,B4B3,B3B4の繁殖候補豚としての発育能力を調査するために,DG,EM,BFおよび体尺値を調べたところ,2系統間交雑豚間に有意な差は無く,同等の発育能力を示した.2系統間交雑豚B4B2,B4B3,B3B4の繁殖能力を調査するために,総産子数,離乳頭数および離乳時総体重を調べたところ,2系統間交雑豚間に有意な差は無く,同等の繁殖能力を示した.2系統間交雑豚B4B2,B4B3,B3B4の肥育豚としての能力を調べるために産肉能力調査を実施したところ,系統間で有意な差は無く,同等の産肉能力を示した.以上の結果から,新たに造成されたB4は,EMやBF等の産肉性に優れており,過去に造成されたB2,B3のいずれと組合せても,増体,産肉性,肉質のバランスの取れた肉豚生産が可能であると考えられた.

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「黒さつま鶏」への飼料用米給与技術の確立

加治佐修・酒井仁司・内村正幸・鈴々木昭一

要約

黒さつま鶏」へ長期間飼料用米を給与する技術を確立するため,3週齢以降の「黒さつま鶏」に飼料用米(玄米)を添加した飼料を給与し,発育性,産肉性,肉質について検討した.配合飼料を玄米で代替する割合は,20%までは発育に影響しない.配合飼料の10%を玄米で代替する場合,飼料中の粗蛋白質(CP)が低下する.これを補う蛋白質原料として大豆粕,魚粉を比較した結果,大豆粕を添加した群のむね肉で旨味,甘味を呈するアミノ酸含量が高い値を示した.これらの成果を基に,「「黒さつま鶏」飼料用米給与マニュアル」を作成した.

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