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更新日:2023年3月29日
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白尾吏・餅田利之・相本涼子・遠嶋太志・重光雄・藤川和博
鹿児島県内の野菜有機栽培圃場(n=53)の土壌化学性と土壌微生物性の実態を調査した結果,pH(H2O),可給態リン酸および塩基飽和度の県土壌診断基準の上限を超過した圃場が多かった。次世代シークエンスによる有機栽培圃場の糸状菌および細菌の種数,多様性指標については,慣行栽培圃場(n=10)との差は認められなかった。なお,pH(H2O)と細菌の種数および多様性指標との間,塩基飽和度と糸状菌,細菌の種数および細菌の多様性指標との間に負の相関が認められた。
鹿児島県農業開発総合センター内の栽培開始3~4年目の有機栽培転換期の圃場においては,土壌肥沃度の指標である可給態窒素や全炭素が高まり,微生物バイオマスの指標である土壌からの抽出DNA量およびATPは有機栽培区が慣行栽培区や無作付区に比べて多かった。一方,次世代シークエンスによる糸状菌および細菌の種数については区間差は認められなかったが,主座標分析から有機栽培区,慣行栽培区および無作付区の微生物群集構造にそれぞれ違いが認められ,優占して生息する微生物種が異なることが示唆される。
鹿児島県内の有機栽培圃場における土壌微生物性の解析(PDF:1,331KB)
田中義弘・尾松直志・樋口康一・竹之下佳久・湯田達也・畠山勝徳・松元哲
指宿地域で維持されてきたナバナ(指宿在来種‘開聞1号’)は,アブラナ科のBrassica rapa L.の在来種であり,指宿菜の花マラソン景観用として重要な観光資源である。指宿地域では,2013年にキャベツ等のアブラナ科野菜で根こぶ病の発生が確認され,ナバナでも,根こぶ病による生育不良が散見された。指宿地域の根こぶ病はグループ4菌に分類され,対策としては抵抗性遺伝子CRbを有する品種の利用が効果的である。そこで,DNAマーカーによって根こぶ病抵抗性遺伝子CRbを導入し,‘開聞1号’と類似する系統‘鹿児島2号’を育成した。‘鹿児島2号’は,根こぶ病抵抗性遺伝子CRbをホモ型に持ち,‘開聞1号’に比べて開花が早く,花色,草姿は‘開聞1号’と類似している。
根こぶ病抵抗性CRbを有するナバナ系統の育成(PDF:1,304KB)
林川修二・西裕之
鹿児島県内の各地域から採集したハスモンヨトウ,シロイチモジヨトウのジアミド系殺虫剤に対する感受性およびその他系統の殺虫剤の殺虫効果を食餌浸漬法で調査した結果,ジアミド系殺虫剤に対する感受性低下はハスモンヨトウでは認められなかったが,シロイチモジヨトウでは顕著であった。なお,供試薬剤の中で,シロイチモジヨトウ2齢幼虫に対して殺虫効果の高かった薬剤はエマメクチン安息香酸塩,スピネトラム,スピノサド,インドキサカルブ,ルフェヌロン,クロルフェナピル,ピリダリル,レピメクチンの8剤のみであり,ハスモンヨトウより有効薬剤が少なかった。
鹿児島県におけるハスモンヨトウ,シロイチモジヨトウのジアミド系殺虫剤に対する薬剤感受性および各種薬剤の殺虫効果(PDF:841KB)
高橋敬祐・酒井仁司・加治佐修
「かごしま地鶏」の肉質特性解明と飼養管理による発育改善について検討した。黒さつま鶏とブロイラーのATP関連物質含量を比較したところ,「かごしま地鶏」のK値が有意に低く,うま味成分であるイノシン酸や機能性成分であるアンセリンが高かった。また,発育改善についてマニュアルの餌付け期間を42日齢に延長した結果,105日齢体重が有意に高く,飼料要求率も低かった。さらに出荷日齢の短縮が肉質に大きな影響を与えなかったことから,餌付け期間延長が,早期出荷に有効であることが示唆された。
「かごしま地鶏」の肉質特性解明と飼養管理による発育改善(PDF:465KB)
賀村幸菜・中島亮太朗・有島太一・瀬戸口浩二・鬼塚剛
近年,和牛肉の人気が上昇する一方で,和牛の生産現場においては,繁殖雌牛の受胎率向上や分娩間隔短縮等による収益性の向上が求められている。そこで本研究では,黒毛和種の繁殖雌牛における低受胎に関連するForkhead box P3(FOXP3)遺伝子の効果検証を実施した。その結果,低受胎牛群(人工授精4回以上実施)と対照牛群(人工授精1~3回で受胎)の両群では,FOXP3遺伝子のプロモーター領域にある関連SNPの低受胎リスクアリルGをホモで持つ遺伝子型GGの実測値頻度はそれぞれ0.08,0.06と共に低く,生産現場において淘汰や肥育への選択が行われていることが示唆された。さらに,解析を実施した繁殖雌牛について,遺伝子型GGは,初産時の受胎に要した人工授精回数が1.93回と他の遺伝子型GA(1.73),AA(1.84)と比べて多かった。
黒毛和種における低受胎に関連するFOX3遺伝子の効果検証(PDF:386KB)
川原賢士・後藤介俊・中塩屋正志・郷原幸哉
本県は,バークシャー種の系統豚である「サツマ」,「ニューサツマ」,「サツマ2001」,「クロサツマ2015」の4系統豚を造成しており,これまでに3系統豚の精液および胚を遺伝資源として保存している。
本研究では,「クロサツマ2015」の精液および胚の凍結保存を行った。また,豚凍結精液は液状精液に比べて人工授精における受胎率等の成績が悪いことから,融解後の精子活力および受胎率・産子数の向上を目指し,凍結精液の作製方法について検討を行った。
(1)精液の一次希釈液への感作温度を,従来法の室温と水温よりも低下させたところ,凍結・融解時の精子活力を向上させられる可能性が示唆された。
(2)本研究で検討した方法で作製した凍結精液を用いて1発情あたり1回人工授精を行った結果,従来の方法で作製した凍結精液を用いて1発情あたり2回人工授精を行った結果と同等の受胎成績であった。
「かごしま黒豚」第4系統における遺伝資源の凍結保存に関する研究(PDF:905KB)
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