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ホーム > 産業・労働 > 食・農業 > 農業技術 > 研究報告 > 研究報告(令和3年度)

更新日:2022年3月28日

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研究報告(令和3年度)

1八重咲きテッポウユリ‘咲八姫’の育成とその特性および切り花出荷技術

今給黎征郎・諏訪康子・白山竜次

テッポウユリでは初となる八重咲き品種‘咲八姫’を育成した。‘咲八姫’は花被片が従来のテッポウユリの6枚に対し,12~15枚ある。親品種の‘ピュアホルン’と同様に,花は上向きに咲き,立葉で草姿が優れ,葉枯病に強い特性を有している。切り花栽培は,4~5月出し(季咲き)の作型に適する。12~3月出し促成栽培は,開花を早めるため,冷蔵温度10℃で冷蔵期間を慣行法より1週間長くする必要があるほか,奇形花対策が課題である。蕾で収穫した切り花は,市販の前処理剤を3時間以上処理すると,蕾開花率や日持ちが向上する。

重咲きテッポウユリ‘咲八姫’の育成とその特性および切り花出荷技術(PDF:592KB)

2畜ふん堆肥の30年連用が普通作物収量と土壌理化学性に及ぼす影響

相本涼子・餅田利之・森清文・脇門英美・西裕之・井上健一・白尾吏

腐植質厚層アロフェン質黒ボク土壌(以下,多腐植質厚層黒ボク土壌)において,牛ふん,豚ぷん,鶏ふんを用いて,これら堆肥の窒素施用量を化学肥料の倍量とした連用試験を30年間実施し,原料用サツマイモ-麦類の輪作体系での収量および土壌理化学性に及ぼす影響を検討した。原料用サツマイモの収量は牛ふん堆肥および鶏ふん堆肥を施用した栽培が化学肥料栽培と比べて同等以上であった。一方,麦類の収量は家畜ふん堆肥を施用した栽培が化学肥料栽培を上回り,肥料としての利用が可能であった。土壌中の交換性塩基含量の変化は,施用量と吸収量の収支に影響され,豚ぷん堆肥区では交換性カリウム含量が低く推移した。豚ぷん堆肥区では収量の低下がみられた。牛ふん堆肥連用による土壌物理性の改善効果は,豚ぷん堆肥及び鶏ふん堆肥に比べ大きかった。家畜ふん堆肥の連用による持続的な農業生産を展開するためには,畜種ごとの養分供給量を考慮して,不足する養分をその他の資材で補いながら,家畜ふん堆肥を活用することが必要である。

畜ふん堆肥の30年連用が普通作物収量と土壌理化学性に及ぼす影響(PDF:1,804KB)

3島大根の品種育成およびその栽培方法に関する研究

田中義弘

研究では,鹿児島県の代表的な伝統野菜である桜島大根に注目し,品種改良に有用な遺伝様式を明らかにし,さらに得られた遺伝学的知見を基にF1品種を育成した。併せて,安定採種に向けたF1純度検定および空洞症発生を軽減するための栽培方法についても検討した。
まず,桜島大根の肥大根重,肥大根の形態および空洞症に関する遺伝学的知見を得るために片側ダイアレル分析を行った。その結果,肥大根重は,広義の遺伝率が高く,かつ狭義の遺伝率が低く,超優性の形質であると推定された。一方,空洞症の大きさを示す空洞面積率は,完全優性に近い不完全優性の形質と推定された。また,肥大根の形態に関して画像解析ソフトSHAPEによって解析した結果,主に扁球程度の指標となる根径/根長比を表す第1主成分は,完全優性から超優性の形質と推定された。以上のことから,肥大根重および肥大根の形態の均質化にはヘテロシスを利用したF1育種法が有効と考えられた。一方,空洞症は,環境の影響も受けやすく,その軽減には栽培法の改良が必要と考えられた。
いて,育成したF1品種‘桜島おごじょ’は,既存品種に比べて肥大根重は同等以上で,かつ揃いが良く,肥大根の形態は桜島大根の典型的な扁球であった。また,空洞症の発生が少なく,す入りの発生が遅いという有用特性も持っていた。さらに,‘桜島おごじょ’のF1種子を安定的かつ大量に生産する上で,得られた種子のヘテロ接合性を保証する純度検定法の開発は必須である。このため,本研究ではアブラナ科のBrassica rapa L。に対するマイクロサテライトマーカーの適用可能性を検討し,少なくとも8種のマーカーが‘桜島おごじょ’の多型解析に利用できることを明らかにした。
後に,空洞症の発生しにくい施肥方法,株間および播種期について検討した結果,施肥については生育初期の土壌窒素濃度を低くすること,株間については狭くすること,そして,播種期については9月中旬頃に遅らせることが,空洞症抑制に有効であることが明らかになった。特に施肥方法については,肥効調節型窒素肥料を用いることで空洞症の発生を顕著に抑制でき,慣行栽培の追肥重点施肥と同程度の商品収量を確保可能であることが分かった。
述のとおり,本研究から得られた成果は次の3点にまとめられる。

①桜島大根における肥大根重および肥大根の形態,空洞症発生の遺伝様式の解明。
②得られた遺伝学的知見に基づいた新品種の育成,新F1品種‘桜島おごじょ’は,在来品種に比べて,肥大根の均質性が高く,しかも空洞症やす入りの発生が少ない特徴を有する。
③安定したF1採種を行うための純度検定法,安定生産を可能とする栽培方法に関する有用知見の取得。

島大根の品種育成およびその栽培方法に関する研究(PDF:1,537KB)

4インドレス鶏舎における季節毎のブロイラーの適正な飼育密度の検討

井仁司・高橋敬祐・加治佐修

節毎にウインドレス鶏舎におけるブロイラーの生産性に考慮した適正な飼育密度について検討した。県内の平均的な飼育密度を基に夏期,秋期および冬期の3シーズンに,夏期では48羽/坪,50羽/坪および52羽/坪の3水準,秋期および冬期では56羽/坪,59羽/坪および62羽/坪の3水準の試験区を設定した。飼育密度が高いほど生産指数は低くなる一方で,坪当たりの出荷重量は大きくなる傾向にあった。1羽当たりの出荷体重は夏期は52羽/坪,秋期および冬期は56羽/坪が最も大きい結果となった。飼育面積当たりの粗利益を考慮すると,夏期は52羽/坪,秋期は56羽/坪,冬期は62羽/坪が推奨される。

インドレス鶏舎における季節毎のブロイラーの適正な飼育密度の検討(PDF:685KB)

5球分離法を用いた体外受精胚からの一卵性双子生産の検討

原正吾・安樂雄太・瀬戸口浩二・鬼塚剛

補種雄牛の早期産肉能力推定に活用するため,割球分離法による一卵性双子生産の検討として,体外受精胚作出における発生培養液の改良に取り組んだ。抗酸化作用等の多様な生理機能を有するラクトフェリン(Lf)を発生培養液に0。5%添加することで,と畜場由来の体外受精胚において孵化率が有意に増加した。また,0。5%Lf添加発生培養液を用い,と畜場卵子および経腟採卵卵子由来の分離割球において,胚盤胞発生率が56。7%および37。2%であり,通常の体外受精胚作出培養と同等な発生成績であった。さらに,作出した割球分離胚を黒毛和種経産牛30頭に移植したところ10頭が受胎し,1組の一卵性双子を得た。

球分離法を用いた体外受精胚からの一卵性双子生産の検討(PDF:331KB)

6ークシャー種の異系統間における産肉能力と肉質特性の違い

小田勉・井之上弘樹・高橋宏敬・喜田克憲・多田司・井尻大地・大塚彰

鹿児島県ではバークシャー種で4つの系統豚を造成してきた。このうち第2系統豚(B2),第3系統豚(B3)および第4系統豚(B4)を単飼で7頭ずつ飼養し,産肉能力と肉質特性の違いを調査した。産肉能力をみると,肥育後期の一日増体量はB2がB3及びB4(以下B3・B4)に対し,有意に低く(P<0.05),出荷日齢もB2が(B3・B4)より有意に長かった(P<0.05)。背脂肪厚はB2の2.2cmに対し,(B3・B4)は2.0cmとなり,枝肉の厚脂率もB2の29%に対し,(B3・B4)は14%となった。ロース断面積はB4>B3>B2でそれぞれに有意差がみられた(P<0.05)。各区5頭ずつのロースブロックを用い,理化学検査と消費者パネルによる官能評価を実施した。その結果,ロースの水分と背脂肪の脂肪融点で,B2と(B3・B4)間に有意差がみられた(P<0.05)。また,メタボローム解析で3系統豚に有意差のあった31種類の代謝物質中,B2とB3間には20種類(64.5%),B2とB4間には19種類(61.3%)があり,それぞれの約半数の10種類は共通する物質であった。このほかB3とB4間に差のある物質は7種類(22.6%)のみであった。官能評価では総合評価,うま味の好ましさ,脂肪の甘味の3項目の順位に有意差がみられ,B2が一番高い評価となった。系統造成の際,B3とB4は鹿児島県内の在来豚を基礎豚としたが,B2には一部英国産バークシャー種を導入した。この基礎豚の違いが産肉能力や肉質特性に影響を及ぼした可能性が示唆された。

ークシャー種の異系統間における産肉能力と肉質特性の違い(PDF:925KB)

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