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更新日:2022年6月1日

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第8号日本語要約版

05.03鹿児島県環境保護課

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記事1-知事コメント

昨年12月に発生したスマトラ沖地震及び津波により被災された皆様に対し,心からお見舞いを申し上げますとともに,一日も早い復興と被災された方々の心が癒されんことを心からお祈りいたします。
さて,過去にお送りした本レター6号・7号を通じて,鹿児島県奄美群島が世界自然遺産の国内候補地に選定されたニュースをお伝えしました。鹿児島県では屋久島に続く2番目の遺産登録をめざして活動を続けています。
奄美大島を中心とする島々には13万人余りの人々が暮らしています。営まれる暮らしのすぐ近くに見られる希少野生動植物や豊かな生態系等をどのように保全していくかなど,全く新しいテーマに取り組んでいます。困難を伴う作業ですが,私たちに与えられた自然資源の公正な利用という目標のもと,自然と人とが共生できる社会の実現をめざして今後とも全力で進めてまいります。
今号では,奄美群島の自然の特徴の一つであるサンゴ礁の特集と登録に向けた地域の動きなどもご紹介します。
最後に,本年10月に青森県で開催される世界自然遺産会議で再会できることを念願しております。
(鹿児島県知事伊藤祐一郎)

記事2-第2回世界自然遺産会議開催地から『冬の白神山地』

青森県の今冬は、20年ぶりの豪雪。このため、鉄道や空港など運休や欠航が相次ぎ、交通に大きな混乱が生じた。雪が解けた白神の森では、ブナの幹に生えたコケの位置で雪が積もっていた高さが分かる。昆虫のカマキリは、来るべき冬の降雪を予想して木の枝や草の幹に卵を産みつけるといわれている。今年の豪雪、カマキリの予想は的中したのか気になるところ。
2月,地元西目屋村では乳穂ヶ滝(におがたき)に見事な氷柱ができれば豊作になるといわれている。
厳しい冬の間も,白神の生きものはじっと来るべき春を待つ。白神の春は生命の躍動が実感できる素敵な季節。
白神山地会議(SICWNH)は,その白神山地が鮮やかな紅葉に変わる秋10月に開催。皆様のおいでを心からお待ちしています。

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屋久島NOW

記事3-1インストラクターだより~川で遊ぼう!(エビ採り編)

屋久島での環境学習をサポートするインストラクターは、屋久島ならではのプログラムづくりに取り組む。
今回は、屋久島で見ることのできるエビについて紹介。
屋久島の川をちょっと覗いてみるとたくさんのエビが泳いだり隠れたりしている。エビフライやお寿司のエビなどを思い浮かべるでしょうが,そういった料理で目にするエビはほとんどが海にすんでいるエビや養殖されたエビ。
屋久島の川にはどんなエビがすんでいるのか,実際に川でエビを捕まえてみましょう。エビを捕まえるのは意外に簡単。網やペットボトルを改造した罠を仕掛ければたくさん採れます。他にも,杉の葉などを束ねて流れに沈め数日後に杉の葉に隠れているエビを捕まえる方法も。浅い川なら,手づかみだって。捕まえたエビをよく観察してみると形や大きさの違いなどから,意外に多くの種類がいることに気がつく。屋久島の川には,少なくとも十種類以上の川のエビがすんでおり,川エビは大きく二つのグループに分かれている。テナガエビの仲間とヌマエビの仲間。テナガエビの仲間には成長すると,ハサミの先からしっぽの端までの長さが25cmを超えるものも(コンジンテナガエビ)。ヌマエビの仲間はよく見るとカラフルなエビが多い。観賞用に飼う人もいる。
屋久島の川のエビのほとんどが生まれてすぐに親からはなれ,川の流れにのって一度海に降りる。海で浮遊生活をしながら(ゾエア期といわれています),小さいプランクトンなどを食べて成長。何度も脱皮した後に再び川に戻ってくる(両側回遊種といいます)。
全国的に川のエビ類は激減している。主な原因は,河川改修でコンクリート護岸が増えたことや都市排水・農薬の影響で川の水が汚れたことだといわれている。屋久島の川に多くのエビがすんでいるということは,川と海の両方の環境が良好であるということ。夏になると,泳いだり飛び込んだりして遊ぶ子どもの姿がみられます。これからも,子ども達が安心して遊び,多くの生き物が生息する川を保っていきたいもの。
採ってきたエビのうち,大型のテナガエビはそのまま空揚げにするとおいしい。小さいヌマエビ類は,空揚げにして薄塩を振って食べてもいいし,かき揚げにして,うどんなどにのせて食べてもおいしい。生で食べるのはさけたい。
自分で飼育して殖やすのは非常に難しいが,挑戦してみるのも面白いかもしれない。

記事3-2「屋久島における環境保全推進協力金制度及びガイドの登録・認定制度の導入に向けて!!」

屋久島への総入り込み客数は平成15年度には30万人を超え,世界遺産に登録された平成5年度の約1.5倍。このうちヤクスギランド,白谷雲水峡には平成14年度でそれぞれ10万人強,6万人強の観光客が訪れ,縄文杉や宮之浦岳などへの登山客数は5万人を超えた。また,ゴールデンウィークや夏休み期間には縄文杉周辺に1日600人を超える登山客が入り込むこともあるなどオーバーユースによる山岳部の自然環境への影響が懸念されている。
平成15年10月に,屋久島の自然環境の保全をテーマに開催した世界自然遺産登録10周年記念シンポジウムにおいて,ガイドの登録・認定制度を含めた今後のエコツアーガイドのあり方や環境キップ制度などについて,様々な立場・視点からの議論があり,これからの屋久島の取り組むべき課題についての具体的な方向性が見出された。
環境保全推進協力金制度(入山協力金制度)及びガイドの登録・認定制度の導入についての検討が以下のとおり。

1環境保全推進協力金制度(入山協力金制度)

屋久島への観光客の増加により,利用者への指導,登山道・避難小屋・トイレ等の適切な維持管理,自然環境の保全対策など,従来に増して対処すべき新たな課題が生じてきている。
山岳部のトイレ等の維持管理や屋久島の自然環境の保護,保全等に係る費用の一部を利用者が負担することを目的とした環境保全推進協力金制度の導入に向け,国,県,地元両町,関係団体で構成する屋久島山岳部利用対策協議会にワーキンググループを設置し,使途,金額,収受対象者・方法等について具体的検討を行っている。
早ければ平成17年度から実施する予定である。

2ガイドの登録・認定制度

屋久島環境文化財団,屋久島観光協会,ガイド関係団体,国,県,地元両町等で構成する屋久島エコツーリズム支援会議において平成15年10月にとりまとめられた「屋久島エコツーリズムの推進のための指針及び提案等」において提案されているほか,今後のエコツアーガイドのあり方などについて議論が行われた先述のシンポジウムにおいても,これからの屋久島の取り組むべき緊急の課題とされた。

また,環境省のモデル事業において,屋久島が選定され,推進母体となる「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」が平成16年9月に設立された。現在,地元両町,ガイド関係者,環境省,財団等で構成する作業部会でエコツアーガイドの登録・認定制度について,対象とするガイドの範囲,制度のあり方・運用方法などの具体的検討を行っており,平成17年度に制度の試行,18年度に本格運用を目指している。

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記事4-1-世界自然遺産候補地『奄美群島』どんなところ?(サンゴ礁編)

琉球列島中部に連なる奄美群島。島々の周囲にはサンゴ礁が発達し、200種を超えるサンゴが分布している。イノーとよばれる波が穏やかなリーフの内側(礁池)には、枝状のサンゴ群落が広がり、シーバナとよばれるリーフエッジ(礁縁)には、波に強い骨格のしっかりした固いサンゴに覆われている。リーフの外側の礁斜(礁斜面)には、卓状のサンゴが重なりあい、サンゴ礁独特の水中風景が広がる。海岸には、アダンやクサトベラ等の海浜植物が生い茂り、サンゴが砕けてできた砂浜では、5月から7月にかけてアカウミガメやアオウミガメが産卵に訪れる。
奄美の人々は、昔からサンゴ礁の恵みを受けてきた。サンゴ礁に生息するエラブチ(ブダイ)やヒキ(スズメダイ)、ネバリ(ハタ)などの魚類、イビ(イセエビ)やテゴシャ(セミエビ)などの甲殻類、カタンニャ(チョウセンサザエ)、ヤッコゲ(ヤコウガイ)などの貝類、シマダコ(ワモンダコ)やスガリ(アナダコ)などのタコ類、コブシミ(コブシメ)やミズイカ(アオリイカ)などイカ類。ガシツ(シラヒゲウニ)というウニ類等々。魚介類に加え、ユリムンとよばれる漂着物も、海の彼方にあるという豊穣の国ネリヤカナヤからの贈りものだと言われ利用されてきました。現在でもサンゴ礁での素潜り漁や追い込み漁、大潮の干潮時に干上がったリーフで貝やタコを採るイザリ漁も行われている。近年、スキューバダイビングやシーカヤックも盛んで、体験型の観光客も多く、サンゴ礁の価値も高まっている。
一方、奄美群島においてもサンゴ礁の撹乱が問題に。開発や赤土流出によるサンゴ礁の減少に加え、1970年代から度々オニヒトデの大量発生により被害を受け、1998年夏には大規模なサンゴの白化現象により、礁原のミドリイシ類のサンゴの大半が死滅した。追い打ちをかけるように2001年からは再びオニヒトデが大量発生。奄美群島では、過去30年間に160万匹のオニヒトデが駆除されているが、広域のサンゴ礁の保全は未達成。最近、サンゴ群集や観光利用等を考慮したサンゴ礁重点保全海域を設定し、集中的にオニヒトデ駆除を実施し、サンゴ礁保全に取り組んでいる。

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記事4-2-奄美群島の世界自然遺産登録に向けた取組について

奄美群島国定公園は,1974年2月,鹿児島県の南端に位置する奄美大島,喜界島,徳之島,沖ノ永良部島,与論島よりなる奄美群島において,亜熱帯性の特色豊かな景観を有する海岸部を中心に指定された。
契機となったのは,1962年にシアトルで開催された第1回世界国立公園会議における海中公園に関する勧告。同勧告では「海洋と,そこに産する生物は,陸地と同様に貴重である。人口の圧力は次第に海に対しても加わっている。海の生地を保護するため海中公園又は保護地の設定について検討されたい。」と述べられ,参加各国が賛同した。日本でも,当時の厚生省が本勧告に基づき海中公園の設定準備を進めることとなり,奄美群島もその有望な候補地の一つに。
県では,公園指定を前提として,1965年度,日本自然保護協会・海中公園調査委員長田村剛博士に委託した奄美大島の学術調査を手始めに,1966年度,鹿児島大学による奄美大島以外の島々の学術調査,まとめとして1968年度に(財)海中公園センターに委託し,「奄美群島自然公園予定地基本調査」を実施。続く1969年度には具体的な区域案を定める「奄美群島自然公園計画調査」が行なわれた。
「奄美群島自然公園予定地基本計画調査報告書」には,「奄美群島の景観の最大の特徴は,サンゴ礁であるといえるが,そのうちでも裾礁として質量ともに優れているのは,奄美大島では笠利半島の東海岸のアヤマル岬と和野の間,徳之島では東海岸の神之嶺と亀徳の間等であり,堡礁としては与論島,卓礁としては喜界島の隆起サンゴ礁の百之台があげられる。また,地形に関しては沖永良部島の礁石灰岩による鍾乳洞群も異色といえる。」と説明されている。
翌年の「奄美群島自然公園計画調査説明書」では,田村剛博士により「観光的魅力は満点というに足るが,そのうちでも海岸と海中で,怪奇を極めるサンゴ礁景観と陸上の琉球石灰岩地帯に展開するカルスト景観と地下に広がる鍾乳洞や,黒潮に洗われて出現する豪壮な海蝕断崖等は,特に印象的である。これらの自然公園の景観形式としては,他に類例を見ない独特のもので,しかも傑出しているので国立公園級のものとして格付けされるに十分」と評価されている。
こうした評価をもとに,国,地元市町村等との協議を経て,1974年に指定された。
なお,海中公園としては,奄美大島5ヶ所,徳之島1ヶ所,与論島2ヶ所に計8ヶ所が指定された。また,奄美大島や徳之島には亜熱帯性の広葉樹林を擁する山地も見られ,湯湾岳や井之川岳が特別保護地区に指定された。さらに,奄美大島の住用村にあるマングローブは,当時国内最大級のもので,同じく特別保護地区に指定されている。
指定より30年を経た本年,鹿児島県では同国定公園の全面的な見直しに取り組んでいる。これは2003年5月,日本国政府の「世界自然遺産候補地に関する検討会」において,奄美群島を含む琉球諸島が,知床,小笠原諸島とともに世界自然遺産候補地に選定されたことによる。
検討会では,奄美群島には世界的にも例を見ない亜熱帯性の常緑広葉樹林が見られること,アマミノクロウサギやオオトラツグミなど奄美群島のみに生息・生育する固有種や遺存種が多いこと,世界の北限で多様な種が生息するサンゴ礁が発達していることなどが高く評価された。
皮肉にも今回の奄美群島に対する評価は,国定公園指定時に,海岸線の景観を高く評価したのに対して,陸側の山林部の自然環境とそこに生息する野生動植物を高く評価したものになっている。
鹿児島県レットデータブックでは,鹿児島県内の特に絶滅の恐れのある種(絶滅危惧1類及び絶滅危惧2類)として,動物が309種,植物が913種選定され,そのうち奄美群島におけるものが動物で半数以上,植物で2割程度奄美群島に生存している。
このように,奄美群島は,希少野生動植物の宝庫であり,それを支える自然環境は,希少野生動植物にとって非常に重要な地域であるが,これまでその重要性についての認識は必ずしも十分とは言えなかったことから,内陸部の保護担保措置は限られており,政府の検討会では,その点が課題であると指摘されたのである。
では,希少野生動植物について,どの種が,どの地域に,どの程度生息・生育しているのか,これまでその詳細についての調査は十分に行われていない。
そのため,鹿児島県では,環境省の補助を受け,2003年度から2005年度の3カ年で,奄美群島重要生態系地域調査事業を実施し,動植物の生息・生育状況など自然生態系の現況に関する調査はもとより,専門家による学術検討会の設置や地元住民による現地有識者会議を設置して助言や提言をいただくなど,現況調査の結果を広く公開し,専門家や地域住民等からより多くの意見を求め,どの地域をどのように保護するかを検討することになった。
また,住民を対象に,奄美の自然に関する公開連続講座を開催し,地域住民の自然保護の普及・啓発を図っている。
県としては国や市町村,沖縄県とも協力しながら,国立公園等の保護地域の指定によって世界自然遺産登録の課題である十分な保護担保措置の実現に最大限努力する所存。そして奄美の人々も,今改めて自然との共生を模索しつつ,世界的に貴重な「わきゃ島」を,いつの日か,世界自然遺産に登録しようと夢に向かって歩み始めたところである。

記事5-1屋久島通信員・ニューズレター会員からの便り

畏敬の念を抱きつつ・・自然を大切にしていきたいです。
北海道男性M・S
屋久島の自然の中で,コケたちがとってもかわいらしかったです。
東京都女性T・S
屋久島の自然にふれ,感動の連続でした。この自然を守り続けていかなければいけないと思いました。また,来たいです。
福島県男性T・K
命の繋がりを感じることができる島です。
福岡県女性K・H
インド,インドネシアからの礼状等要約文

記事5-2編集後記

今回も特集した奄美群島の常緑広葉樹林。騒音を出さず,見た目に美しく,空気を汚染しないだけでなく副産物として酸素も供給してくれます。酸素の生産,水の浄化,汚染物質の濾過,土壌浸食の防止などはすべて健全な生態系が果たす重要なはたらきです。世界中の生物多様性がもたらす金銭的利益は計り知れないでしょう。
地球温暖化や地震の仕組みなど,もっともっと自然環境のことを地球自身に聞く必要があるようですが,私たちと地球とのコミュニケーションは必ずしも十分とはいえない面があるようです。
第2回世界遺産会議のテーマは『大いなる命(いのち)の循環見つめよう,自然の中の私たち』です。こうした問いかけの一歩になればいいですね。
なお,鹿児島県からのニューズレターは本号をもっていったん終了となり,皆さんのもとには第2回遺産会議の情報が届きます。長い間ご愛読くださいましてありがとうございました。

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環境林務部自然保護課

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