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更新日:2017年4月25日

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秋ギクの育苗体系(大隅地域)

1母株管理

(1)母株(親株)の淘汰・選抜

キクは長年栽培を繰り返しているうちに,系統分離し形質が変化してきます。
品質を維持するために,次年度用母株は,通常栽培したほ場から必ず生育開花状況を確認し,次の点に注意して劣悪個体を淘汰することが重要です。
  • わい化症、モザイク症、えそ斑等の症状がある個体
  • 花(色・形・ボリューム・花弁のねじれ)、葉(色・形)が悪い個体
  • 草丈の伸びが悪い個体、逆に伸びすぎる個体
  • 開花が極端に早い個体、遅い個体
一方,少数の優良個体を選抜し増殖する方法もありますが,これは時間と労力を要するので,状況に合わせて使い分けるようにしましょう。
 
劣悪株の淘汰や優良株の選抜は,その品種の特性(無側枝性,低温開花性等)を十分確認できる作型で行いましょう。

(2)母株(親株)の栽培

母株は活性を高めるために,冬期自然低温に十分遭遇させたほうが良いでしょう。
よって,季咲き~12月までに収穫した株を母株として,無加温ハウスか露地に移植します。
新神などの無側枝性の品種や神馬2号では,高温期に採穂した穂を利用した作型において,切り下株が不萌芽になることがあるので注意します。

露地移植の場合,低温期になると活着・生育が劣り萌芽数が少なくなるので,12月上旬までに移植するのが良いでしょう。冬至芽が発生してきたら,古枝は除去します。
母株は畦間120cm,条間20cm,株間20cmの4条植えで,無摘心栽培で本ぽ10a当たり,母株700株,母株面積は50平米程度必要となります。
肥料は窒素・リン酸・カリウム成分で各5kg/10a程度を基肥に,摘心(台刈り)時に同量程度追肥します。
冬至芽が伸び出したら,摘心を繰り返し,最終摘心は新母株のさし芽予定日の25~30日前までに行います。
1株の母株から,良質の冬至芽が約3~4本発生し,1回摘心で新母株用のさし穂が10本程度採穂できます。

(3)新母株の栽培

(ア)はじめに

母株栽培はキクづくりの中でもっとも重要な部分です。なぜなら,キク栽培の善し悪しは半分以上“穂の出来”で決まってくるからです。

「良いキクづくりは良い穂づくりから!」をモットーに計画的に取り組みましょう。

(イ)施肥

母株の栽培期間は100~120日です。緩効性肥料をうまく利用しながら,摘心・採穂後などに液肥により追肥し,肥料切れを起こさないように注意します。
施肥はトータル窒素量として10~15kgを目安に行います。
基肥の施用量や追肥のやり方は使用する肥料(速効性,緩行性等)によって調節します。

(ウ)定植時期の決定

キク栽培は「いつどれだけ出荷するか?」によって全ての作業日程が綿密に決まります。まずは大まかな作業日まで記入した「ほ場の作業計画」をしっかりと立てることが最も重要な作業となります。
作業日程は,労働力のバランスを考えながら作成し,万が一のトラブル対処のためにも,少し余裕を持たせることがコツです。
新母株の定植時期は本ぽ定植日から逆算して決定します。
一般的に,直挿し定植で穂冷15日間の場合,新母株の定植は約80日前となります。

(エ)植え付け株数の決定

新母株の植え付け株数は,本ぽ植え付け本数と摘心回数,品種の特性(採穂性)により決定します。
一般的な品種は2回摘心で1株当たり6~8本,3回摘心で10~12本程度採穂できます。
無摘心栽培の本ぽ10a分(約4万本)に対して,2回摘心1回採穂の場合,新母株は6,000株,新母株面積は3.6a程度必要になります。
作式については母株と同様とします。
 
なお,高温期に無側枝性を発揮する品種(「新神」や「神馬2号」等)では,6~9月の高温期には採穂数が減少する傾向がありますので,新母株の植え付け数を50%程度増やしたほうが無難でしょう。

(オ)摘心

1回目の摘心は,新母株定植後7~10日後に,活着し十分に根が張った状態で行います。この時,展開葉を4~5枚残して摘心します。
2回目の摘心は,側枝が伸びすぎないように注意しながら,1回目摘心2~3週間後に展開葉3~4枚を残して行います。
葉を残しすぎると,次に吹いてくる芽の数が多くなり,細く力のない穂しか生産できなくなるため注意します。
 
2回目の摘心を,穂採りピンチで行う場合は,1回目摘心後3~4週間程度経過させ,側枝を10cm程度まで伸ばしてから,展開葉3~4枚を残して行います。
ただし,穂採りピンチを行うと,品種によってはその後の側枝の発生が少なくなったり,側枝の勢いが弱くなる傾向がありますので注意しましょう。
 
写真:適正に管理されている母株
適正に管理されている母株

(カ)採穂

最終摘心後,3~4週間程度で側枝の長さが10cm程度の頃が採穂適期となります。
側枝を15cm以上伸ばしてしまうと,穂が老化してしまうため,適期を逃さずに採穂するようにしましょう。
 
採穂は充実した穂を確保するために,穂の養分が十分蓄えられる晴天の日の夕方に行うのが最良です。
雨天時の採穂は,穂の水分量が多くなり,穂冷蔵中の腐敗率が高くなるので避けましょう。
また,穂冷蔵中の腐敗の発生や病害虫の本ぽへの持ち込みがないように,採穂前日には必ず病害虫防除を行いましょう。
 
採穂は2~3節残して行い,穂の長さは4~5cm程度(指先から第2間接くらいの長さ)としましょう。
側枝が伸びすぎてしまった場合には,採穂後に必ず2~3節部分まで切り戻しを行い,次に発生する側枝数を制限して充実した穂が採穂できるよにしましょう。
 
穂の老化は地上からの高さが高くなればなるほど進みます。
また,側枝の発生数が多くなればなるほど,細くて弱い穂しか採穂できなくなります。
若い充実した穂を確保するためにも,側枝を伸ばしすぎないように適期採穂を心がけ,母株は低く管理しましょう。
 
採穂の際に,手で簡単に折り取れないような状態の穂は,老化していて発根やその後の生育も悪くなりますので,そのような穂は使用しないようにします。
また,穂が全体的に老化しているようなら,採穂を中止し母株を更新するか,切り戻しを行い母株の若返りを図りましょう。

採穂したらすみやかに日陰に持ち込み,穂が蒸れたりしおれたりしないように注意します。

写真2:良質な穂
適正に採穂された穂

(4)母株の更新

母株は栽培期間が長くなり,株が老化すると穂も老化して力のない不良穂となってしまいます。
2回摘心後,2回採穂して母株を更新するのが理想ですが,母株の栽培期間は長くても120日程度とし,3回採穂後は次の母株へ採穂を移せるように,あらかじめ次の母株を養成して更新することが重要です。
途中,母株が伸びすぎるようなら低い位置で台刈りしましょう。
 
写真3:採穂が終了した母株(適正に管理され,樹高も低く充実している)
採穂終了時の適正管理された母株

(5)その他

「神馬」系品種や「山陽黄金」等の品種は,夏季の高温時に摘心すると萌芽(分枝)が極端に減少します。
このような状態で採穂した穂を利用すると,二度切り栽培時の不萌芽が出やすくなります。このため,高温時の摘心を避けると同時に,萌芽の悪い株からは採穂しないようにしましょう。
二度切りする場合は,必ず葉柄基部に側枝を確認できる穂を使います。逆に言うと,葉柄基部の側枝が消失している場合,二度切り栽培はできませんので,植替用の穂を準備する必要があります。
 
特に「新神」,「新神2」といった無側枝性を有する品種では,6~9月の高温期には不萌芽発生により採穂数が減少しますので,2週間程度の間隔で,摘心・採穂直後にビーエー液剤2,000倍液を散布し,不萌芽発生の軽減を図りましょう。
 
また,「神馬」系品種や「精興光玉」等の品種は,特に湿害に弱いので,排水対策を徹底し,できれば雨よけビニールを張り,梅雨時期の母株の株腐れを防ぎましょう。

2.育苗

(1)穂調整

穂調整は、採穂後すぐに行います。特に,穂冷蔵を行う場合は切り口に発根基部ができますので,スムーズに発根させるために冷蔵後の調整は行いません。まず,生長点から4~5cm程度の長さに折り取り,展開葉を2~3枚残して不要な葉は取り除きます。
次に,穂の大きさで生育に差がでやすいため,この段階で穂を大きさ別に2~3段階に分け,その後の管理をします。

(2)穂冷蔵

(ア)穂冷蔵の目的

穂冷蔵は大きく分けて次の2点を目的として行います。
 
・挿し穂の確保・貯蔵
・低温処理による発根及び草丈伸長性の向上
 
多くの品種は,穂冷蔵により本ぽでの草丈伸長性が増すため,できるだけ穂冷蔵を行いましょう。

(イ)冷蔵前の処理

穂の生長点にアザミウマ類(スリップス)がいると,穂冷蔵中に心腐れが発生しますので,母株でのアザミウマ類防除には特に気をつけます。
ミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマとでは,有効な薬剤が異なるので,効果的な防除に努めましょう。

(ウ)冷蔵温度と期間

冷蔵温度は2℃とし,期間はおおむね1ヶ月以内とします。一般に穂冷蔵期間が長くなるほど,草丈伸長性は増しますが,神馬系品種では到花日数が長くなる傾向があるので,穂冷蔵期間は2週間程度が良いでしょう。

(エ)冷蔵方法

穂が保持している水分や穂から発生する熱によって,冷蔵中に穂が腐敗する場合があります。そこで穂冷蔵を行う場合は,入庫前に穂を日陰に半日程度広げて,穂の余分な水分を取ります。
その後,穂の水分を吸収できるように穂を新聞紙等でくるみ,さらにポリ袋で包むと水分調節がうまくいくでしょう。ただし,ポリ袋の内側にできる水滴が穂に着くと腐敗の原因になるので注意します。
新聞紙の替わりに,機能性フィルム(FHフィルム,フローラエース等)を利用すると,保存性が高まり,ポリ袋で包む必要はなくなります。

(オ)冷蔵中の管理

冷蔵庫への出入りが多いと冷蔵庫内の温度が上昇するため、穂が傷みやすくなります。なるべく冷蔵庫の開閉を行わないように配慮しましょう。
また,断熱効果の高い発泡スチロール箱なら箱内の温度が安定しているため,そのような事故は少なくなります。
冷蔵庫内では冷気が隅々まで行き渡るように配慮します。また,箱の中に穂を詰めすぎると蒸れやすいので注意します。
 
「神馬」は草丈伸長性が強いので,摘心後17~18日で採穂できます。
適正な穂の状態で採穂・穂冷をし,伸びすぎぎないように注意します。
 

(3)挿し芽

(ア)ボラ挿し育苗の方法と注意点

 
(a)育苗施設
育苗施設は暖房と換気ができる電照可能な施設内が適しています。
一般には小規模の場合はパイプハウス,経営規模の大きい場合は鉄骨ハウスを用います。
特に,年末から1~2月出荷用の育苗時期は,高温であることに加え台風の時期でもあるので,育苗床の設置にあたっては台風対策も考慮しましょう。
挿し床は,作業性を考えパイプハウス内にベンチを設置し育苗箱を使用するか,10~15cm幅程度の枠板で囲った隔離ベッドを設け,そこに挿し芽を行います。

(b)挿し芽用土
挿し芽に用いる用土は,排水性,保水性,通気性に優れた清潔なものを用います。
苗立ち枯れ病等が発生しないよう,用土を再利用する場合は,太陽熱や薬剤などで必ず用土の消毒を行いましょう。
 
(c)挿し芽準備
挿し芽用土は,挿す前に良く湿らせておきますが,箱挿しの場合は滞水があると穂が腐れやすいので,箱を傾けて余分な水分は切っておきます。
ミスト装置がある場合は問題ありませんが,無い場合は挿し芽初期のしおれ対策として,晴天の日は黒寒冷紗等で遮光しましょう。
しおれている挿し穂を水揚げするときは,発根剤の入っていない液に2分程度浸漬し,穂を一度給水させます。
その後,発根を促進するために,発根剤の入った液に30秒程度浸漬するか発根剤液を穂の基部に噴霧します。
発根剤は濃度が高かったり,浸漬時間が長いと,かえって発根障害を起こすので注意します。
挿し穂は挿し芽前に水揚げを行いますが,発根剤処理を兼ねて行うのが一般的です。
 
(d)挿し芽
適当な棒で斜めに挿し穴を空け,穂の切り口を痛めないように用土に挿します。
その後,用土と穂の間に隙間ができないよう軽く抑えます。葉の大きさなどを考慮して,3~5cm間隔で穂を挿していきます。
あまり密に挿しすぎると,病気が発生しやすくなるため注意しましょう。
挿し芽後は,用土と穂の隙間をなくすため,十分にかん水を行い根締めを行ないます。
根締めが不十分だと発根が遅れるので注意します。
 
 
(e)定植までの管理
初期は葉水をかけ,日中わずかにしおれる程度に湿度を保ちます。発根に適した環境下では4~5日目に発根を開始しますので,その後は葉水も徐々に控えます。
穂の状態は,日中はややしおれていても,翌日の朝,葉がみずみずしく斜めに立っていれば問題はありません。むしろ水のかけすぎにより日中濡れた状態が続くと,蒸れや病気の要因となるので注意します。
挿し穂の発根適温は15~20℃ですので,夏場は高温対策として寒冷紗等による遮光を行い,冬場は暖房機や電熱線を用いて地温を確保するなどしてして発根を促進します。

(イ)セル成型育苗の方法と注意点

(a)挿し芽用土と準備
挿し芽に用いる用土は専用育苗土を用い,セルトレイのサイズは128穴から200穴が適当です。
用土に「与作」を用いる場合は,挿し芽前に良く湿らせておきますが,「スーパーネデル」を用いる場合は,挿し芽後に湿らせる方が挿しやすくなります。
このように,用土の特性を知って効率的な挿し芽を行いましょう。
 
その他,挿し穂の発根処理等はボラ挿し育苗に準じて行います。
 
(b)挿し芽
1穴に1本挿しますが,セルの深さが5cm程度と浅いので,挿す深さは1cm程度とします。
ボラ挿し育苗時と同様に,切り口を痛めないように適当な植え穴を空けてから挿しましょう。
 
(c)定植までの管理
セルトレイはセルが独立しているため,均一にかん水しても外側の苗が乾燥しやすくなり,均一苗を確保しにくくなりますので,外側の苗にはたっぷりとかん水するよう心がけます。
セル(200穴)苗は根鉢を形成させるために,品種や挿し芽時期により異なりますが,ボラ挿しより少し長めの12日目程度が定植適期の目安となります。
セルトレイの下にある穴を塞がないように管理し,空気に触れるようにしておくことで,根がセルトレイ内だけで伸び,根鉢が形成されるようにします。
 
その他,温度管理等についてはボラ挿し育苗に準じて行います。

(4)電照管理

発根するまでは日長感応しないと言われていますが,危険防止のため,挿し芽時から電照を行います。
3日以上消灯していると栄養生長から生殖生長に移行し花芽分化を開始するので,タイマーと電球の断線の確認をこまめに行いましょう。
また,照度不足でも花芽分化してしまう恐れがあるため,100Wもしくは75Wの電球をおおむね2.5m間隔に設置します(9~10平米に1球)。
電照方法は初夜照明,暗期中断,早朝電照のいずれでも良いですが,効率が良く経済的な方法は暗期中断です。電照時間は深夜に4時間程度が適当です。

(5)苗冷蔵

(ア)苗冷蔵の目的

苗冷蔵も穂冷蔵と同様に大きく分けて次の3つの目的があります。
 
・定植作業の調整のための挿し穂の確保・貯蔵
・低温処理による発根及び草丈伸長性の向上
・低温期のロゼット回避
 
しかし,苗冷蔵を行う事例として最も一般的なのは定植作業の調整を行うためであり,冷蔵による活性化効果を求める場合は,穂冷蔵を行うのが通常です。
根が1~2cm程度の長さになっても定植準備ができていない場合などは苗冷蔵を行いましょう。

(イ)冷蔵温度と期間

冷蔵温度は2℃とし,冷蔵期間は冷蔵庫や包装方法,品種によっては5~6週間でも可能ですが,品種によっては無摘心栽培での心止まり症状が発生する場合がありますので,おおむね1ヶ月以内とします。

(ウ)苗冷蔵の方法

葉が濡れたまま冷蔵庫入庫すると,冷蔵中に腐敗しやすいので,入庫前にはかん水しないようにします。
苗を育苗床から抜いた後,根の土を軽く落とし、新聞紙を敷いた段ボール箱や発泡スチロール箱に立てて入れます。
次に,苗に直接冷気が当たらないように,上から新聞紙をかぶせて蓋をし,全体をポリフィルムで包装します。

(エ)冷蔵苗の定植

冷蔵苗の根は冷蔵中に乾いている場合が多く,乾いていない場合でも定植前に根が乾きやすいので,定植前にある程度湿らせてから定植するようにしましょう。

(オ)セル成型苗の苗冷蔵の注意点

根鉢が形成でき(セルから引き抜いたとき用土が全部根に付いてくるぐらい),定植適期になっても定植できないときには,苗の老化を防ぐために必ず苗冷蔵を行います。
苗冷蔵を行う場合,前日に十分かん水して,セル用土を湿らせておき,翌日の葉が乾いた日中頃に引き抜くと,根鉢が崩れにくく箱詰めしやすくなります。
使用する箱は段ボール箱,発泡スチロール箱,コンテナ等で良いですが,中に新聞紙もしくは機能性フィルム(FHフィルム,フローラエース等)を敷いておきます。
箱は斜めに置き,セルトレイから抜いた苗を下の方から重ねて置いていくと箱詰めが容易です。
箱詰めが終わったら風呂敷包みになるようにフィルムでくるむか,もう一枚上から覆いくるみます。
新聞紙を使用する場合は箱ごとポリでくるみますが,機能性フィルムを使用する場合はポリは特に必要ありません。

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大隅地域振興局農林水産部農政普及課

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